ネタバレありの映画批評 ムービー・インプレッションズ

かもめ食堂

2006年 日本 102分

監督:荻上直子
出演:小林聡美、片桐はいり、もたいまさこ

 

ヘルシンキの食堂を舞台に日本人女三人の様子を描く

女性を中心におそらく数多くのファンを持つであろうこの作品。

北欧フィンランドの港町・ヘルシンキを舞台に、小さな食堂を営む日本人の女主人とそこに転がり込む日本人の中年女二人の様子を描く…、と書けばなにやら暗い雰囲気が漂ってもおかしくないが、くすんだ青をところどころにあしらった「かもめ食堂」の静かな清潔さと、登場人物のユーモア、押し付けがましくない温かさが映し出され、観終わった人間を以前とは少しばかり違った場所へと運んでくれる良作である。

もちろんその要因はキャスティングの妙にあろう。片桐はいりや、もたいまさこの劇団仕込みのコミカルな演技とそれをたしなめる小林聡美の凛とした立ち振る舞い。

同キャストで人気を博したテレビ番組「やっぱり猫が好き」よろしく、事件が起こらずとも派手な立ち回りがなくとも、現実世界から半歩ほど遠ざかった彼女たちのやり取りを観ているだけで、ある種の充実感さえ覚えてしまうから不思議だ。

山も谷もないごく平坦なプロットながら登場人物たちにはそれぞれ何かしら抱えているものがあるであろうヒントが少しずつ提示される。

しかしそれらは決して詮索されたり、愚痴ったり、慰めたり、説明的になることはなく、まるで何事もないかのように物語は進んでいく。つまり観客は頭の片隅に登場人物についての少しばかりの引っ掛かりを感じたままストーリーを追い掛けることになるのだが、それが絶妙なアクセントとなって平坦な物語に奥行きを与えているのだ。

ところで物語の終盤に映し出される、満席の食堂内でもぐもぐとご飯を食べているシーンはこの映画の中では異質。見ようによっては説教臭く感じるのだがどうだろう。(82点)

 

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