ネタバレありの映画批評 ムービー・インプレッションズ

アメイジング・スパイダーマン

2012年 アメリカ 136分

監督:マーク・ウェブ
出演:アンドリュー・ガーフィールド、エマ・ストーン、リス・エヴァンス

 

暗さをまとったヒーロー

第三作まで続いた「スパイダーマン」が、一旦シリーズを終了して装い新たに登場した。

前シリーズ監督サム・ライミの降板で「スパイダーマン4」の制作が頓挫、新監督としてマーク・ウェブが抜擢されたのを機に一新されたのである。

「エイリアン」よろしく、シリーズを異なる監督で続けるパターンもあったと思うが、本作を観てみれば前シリーズと分けて正解だと思うだろう。

前シリーズと異なる点は大小合わせていくつも見つけられるが、一番の違いといえば全体を覆うトーンの「暗さ」にある。

前シリーズの印象はコミックを映像化したわかりやすいものだった。ビルからビルへ飛び移る躍動感溢れる映像、いかにも悪役然としたゴブリンなどの敵役たち。窮地に陥りながらそれらを蹴散らすスパイダーマンの活躍。
リアリティなどは必要とされず、強いヒーローのスパイダーマンが活躍する明快なファンタジーとして描かれていた。

一方の「アメイジング・スパイダーマン」である。

敵はトカゲの国を作ろうとするコナーズ博士。
右腕のないことをコンプレックスに持つ博士は、再生能力があり、過酷な環境に耐性をもつトカゲ(爬虫類)こそ最強と信じている。
投薬により巨大トカゲ・リザードに変身した彼はその肉体的な素晴らしさに酔いしれ、街中の人間をトカゲに変えようと薬の散布を目論む。

もちろんトカゲになってしまうことは人間界からすればいい迷惑だ。
それを阻止すべく我らがヒーロー・スパイダーマンは動き出すのだが、博士の「弱者をなくすためにトカゲにする」というのは、極端な論理であれ完全な悪とは言い切れない。
我々が弱音を吐いたり不安に思ったりする一因には、肉体の弱さがまぎれもなくある。トカゲに変身できることはそれを克服することにつながり、ある面では今よりも幸福なことにつながるのだ。

そのような感情が生まれれば、リザードが攻撃され力尽きる姿に爽快感など生まれない。そこには悲しさがあるし、敵役に悲しさを覚えた瞬間、スパイダーマンは明快なヒーローではなくなる。

物事には必ず表と裏がある。誰かが何かを望めば、良い事象も現れるし悪い事象も現れる。ヒーロー物とはいえ、そういったテーゼ(命題)を織り込めば物語は一方的な明るいものには成り得ない。深さと暗さをはらんだものになるだろう。

「アメイジング・スパイダーマン」は、ひょっとしたらあるファンにとってみれば物足りない作品なのかもしれない。
しかしクリストファー・ノーラン監督の手腕によりシリアスな路線へと変更した「バットマン」のように、「アメイジング・スパイダーマン」も脳天気なアクション活劇に終始することなく、悪と対峙することで生まれる矛盾や苦悩を描く「大人が満足できるヒーロー物」としてシリーズを重ねてほしい。

シリーズごとに同じ事を繰り返し徐々にパターン化して劣化していく物語より、シリーズを重ねるごとに次の展開を期待してしまう深みのあるストーリーを観てみたいのだ。(88点)

 

Pocket