ネタバレありの映画批評 ムービー・インプレッションズ

カフカの「城」

1997年 オーストリア、ドイツ合作 125分

監督:ミヒャエル・ハネケ
出演:ウルリッヒ・ミューエ、ズザンネ・ロータ

 

「城」の映像化。それ以上でも以下でもなく

今から約100年前、オーストリアの片隅でひっそりと創作を行なっていた小説家のフランツ・カフカ。

「朝起きたら自分が巨大な虫になっていた」。そんな「変身」という小説をご存知な方も多いだろう。当時とすれば異端な作品を数多く書いたカフカは、20世紀で最も重要な作家の1人とも言われている。

今作はカフカの代表的な未完の長編小説「城」を映像化したものだ。

小説はある村を訪れた測量士Kが、村の中枢機関である「城」へ向かうがどうしても辿り着けず、翻弄される様子を描く。

Kは城に雇われたと主張するが村人たちにそれを否定され、城の役人たちが通うカフェで出会った村の娘となりゆきで結婚。小学校の用務員の職を得るがすぐにクビになり、また城を目指しはじめるという荒唐無稽な物語だ。

しかしもはやK自身の存在証明となってしまった「城」に辿り着けない事実は、それを読む読者にそれぞれが抱えている存在証明を想起させる。カフカの小説が世界中に読者を得ている理由の一つは、示唆に富んだそんなメタファー(暗喩)にあると言えよう。

その「城」の映画化とあって、私は観る前に様々な思いを巡らせた。辿り着けない城をどのように映像化するのか、また未完の物語をいかに着地させるのか…?

しかしそんな思いとは裏腹に、映画は小説を「堅実に」映像化。城は姿を現さずに、映画もまた結末を持たずに未完で終わる。

果たして原作を読まずにこの作品を観た人が、「城」という作品のおもしろさをどれほど感じえただろう。未完と言えども小説ではかなりページ数のある作品だ。膨大なページ数を数えながら、延々と村の中をさまよい続けるのがおもしろさの一つのなのだが、2時間足らずの上映でただ筋書きを追っただけでそれ観客へと伝わるのだろうか。

原作が文学作品なんだって、文学ってやっぱりわかんないね、そんなおきまりの一言で片付けられるとしたら悲しいことだ。小説を読んだ人がこの映画を観、「原作に忠実だった」と言われることが最大の賛辞となるのなら、この映画を作る意味などあるのだろうか?(52点)

 

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