ネタバレありの映画批評 ムービー・インプレッションズ

カポーティ

2006年 アメリカ 114分

監督:ベネット・ミラー
出演:フィリップ・シーモア・ホフマン、キャサリン・キーナー、クリフトン・コリンズ・Jr、クリス・クーパー

 

小説完成と引き替えに、カポーティが失ったもの

観終わった後「すごくいい映画を観た」という満足感を得ることができた。

オードリー・ヘプバーン主演でヒットした「ティファニーで朝食を」の原作者として知られるカポーティ。その作品だけを取り上げれば華やかなイメージを持たれるかもしれないが、処女作「ミリアム」や初長編「遠い声 遠い部屋」などを読めば、その繊細で鋭い感受性を汲み取ることができる。

この映画はそんなカポーティの傑作ノンフィクション小説「冷血」執筆時の様子を丹念に描いたものである。

カンザスで実際に起こった一家4人惨殺事件に興味を持ったカポーティは、犯人として逮捕された2人組に接触。2人のうちの1人、ベリー・スミスにシンパシーを抱く。創作意欲が湧き出したカポーティは接見を重ねて事件当日の様子を事細かに聞き出そうとする。

映画は事実を元に作られているが、カポーティが死んだ今となってはどこまでが真実なのかはわからない。

まして死刑囚であるベリーにインタビューを重ね「冷血」を書いている時の精神状態がいかなるものであったかは想像の限りではない。

しかし何らかの純然たる事実を持ち出すならば、カポーティは「冷血」完成以降、小説を書けなくなった。アルコールと薬物に依存。「叶えられた祈り」という未完の長編小説を携えたまま’84年に没した。「冷血」発行後、実に20年の歳月が経過していた。

両親の離婚など自分と境遇が似ている死刑囚に何度も会い、共感と同情を抱きつつそれを「ネタ」に小説を書こうとしている自分自身。
ベリーが絞首台に吊るされ息絶えた瞬間、果たしてカポーティは小説の完成へと胸が踊ったのだろうか? それとも…。 一度是非。(86点)

 

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