ネタバレありの映画批評 ムービー・インプレッションズ

シャイニング

1980年 イギリス・アメリカ 148分

監督:スタンリー・キューブリック
出演:ジャック・ニコルソン、シェリー・デュバル

 

ストーリーを放棄した、映画史に輝く傑作

映画界の全世界的巨匠、スタンリー・キューブリックの監督作品。

原作はこれまたホラー小説の巨匠、スティーヴン・キングの同名小説だが、設定だけをそのままに大幅にストーリーを変えたためキングが憤慨し、後に原作に忠実なものを自ら映像化したという逸話はあまりにも有名だ。

この事実から、この映画がキングファンに忌み嫌われているのは当然のこと、キューブリックによって書き換えられた脚本も曖昧模糊とした部分が多く、観終わった後に釈然としないモヤモヤがかなり残る。

例えば超能力を持っているダニーはまったく使いどころがないまま、割とあっさり館から脱出するし、ジャックがなぜ暴走し、狂気じみていくのかの明確な理由付けができていない。館に不意に現れる双子は何者なのかもよくわからない。ストーリーは明らかに破綻している。

しかし、キューブリックがそのような破綻に気づかないはずはない。むしろこの映画においてはストーリーを維持することを放棄したように思われる。

それよりも映像、この映画で完成されたといわれるキューブリックの映像技法。左右対称や無音、ステディカムの使用など、専門的な話になるとつまらないが、つまりはストーリーを度外視し、映像だけで恐怖心を観客に持たせようと試みている。

大広間でタイプライターを打つジャック。タイピングの音が冷たい空気を鋭く切り裂き、一心不乱に指が動き、文字が現われる。それだけで、ジャックの気が狂い始めたことが伝わってくる。

ダニーが眼にする双児は、まったく音がしない廊下にたたずんでいる。それまでの恐怖映画にありがちな効果音はなく、無音が言い知れない緊張感を生み出している。

恐怖映画でありながら、後進の映画に多大な影響を与えた本作。まだ観賞していない人はぜひ観ていただきたい。(90点)

 

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