ネタバレありの映画批評 ムービー・インプレッションズ

スパニッシュ・アパートメント

2002年 フランス 122分

監督:セドリック・クラピッシュ
出演:ロマン・デュリス、ジュディット・ゴドレーシュ、オドレイ・トトゥ、セシル・ドゥ・フランス、ケリ−・ライリー

 

世界中で繰り広げられる、モラトリアムの馬鹿騒ぎ

社会に出る直前の猶予期間、いわゆるモラトリアムを描いたこの作品。

舞台はタイトルの通り、スペインのとあるアパートメントだ。
家賃を安く済ませるため、数人の学生で間借りしているアパートには、主人公のフランス人をはじめ、イギリス人、ドイツ人、イタリア人など、ヨーロッパの様々な国の学生たちが集っている。

我々島国である日本人にとって、地続きの国々がひしめき合うヨーロッパのようなややこしい地域の歴史や状勢、そこに住んで自然と身に付くであろう風土的なナショナリズムを完全に理解することは不可能である。

例えばイギリス人のお調子者がドイツ人に向かって敬礼をしてみせる。この行為が何を意味するか頭では理解ができても、そこに生じる嫌悪感や罪悪感は理解し得ないであろう。しかし私はそのような理解できない心情があったとしても、この映画を観てとてもおもしろく思ったのだ。

夜の町へ住民たちが揃って繰り出し、酒を浴びるほど飲んでゲロを吐く。おもしろおかしく自分の性交渉の成功を自慢したかと思えば、離れて住む恋人を思って寂しくなり住人たちと大騒ぎして憂さを晴らす。

日本人のような「出口なしの青春」というべき悲愴感はなく、悩みごとはあっても翌日になれば忘れてしまうような明るさとたくましさが映画の中にはある。それが観ていてとても清々しい。

物語は終盤、主人公が母国へ帰り、自分の夢を叶えるため就職先を棒に振ってエピローグを迎える。「あ、なんだ、自分探し系だったのか」と最後にようやく気づくほど、メッセージ性は薄い。まるでとってつけたような結末だった。でも私は、彼らの無邪気なモラトリアムを味わいたくて、再び映画を観返すことだろう。(83点)

 

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