ネタバレありの映画批評 ムービー・インプレッションズ

スーパーマン リターンズ

2006年 アメリカ 154分

監督:ブライアン・シンガー
脚本:マイケル・ドハティ、ダン・ハリス
撮影:ニュートン・トーマス・サイジェル
出演:ブランドン・ラウス、ケイト・ボスワース

 

強いヒーローが、ただ強いまま描かれる

ここで紹介するスーパーマンをはじめ、スパイダーマン、X-MEN、バットマンなどアメリカン・コミックの実写版として作られヒットしたヒーロー映画は数多くあるが、その中でも群を抜いて強いと思うヒーローはスーパーマンだ。

優れた頭脳に弾丸などもろともしない強靭な肉体。透視能力を持ち、聴覚も鋭敏。時速800万kmで空を飛び、80万トンの重量を持ち上げる常軌を逸した怪力の持ち主でもある。

この映画の序盤でも地球に戻ってきたスーパーマンが、トラブルに見舞われた旅客機を身一つで受け止めて救助するという破天荒な場面が描かれる。

例えば「ダイ・ハード」と同じ世界にスーパーマンがいたとしたら、ジョン・マクレーン刑事が2時間の尺をまるまる使って勝利する小悪党どもなどは秒速でやっつけてしまうだろう。他のヒーローたちとは物理的な強さの次元が違いすぎる。

ここまでスーパーマンの強さを見せつけられれば、この映画のクライマックスはどのように作られるのか興味が湧いてくる。「強くて無敵でめでたしめでたし」では物語にならない。どのように強いヒーローであれ、死をも覚悟させるような苦難を乗り越えてこそ観客はカタルシスを得られるのである。

「スーパーマン2」の続編となっているこの物語は、釈放された宿敵レックス・ルーサーが最大の敵として配置されている。レックスの目的はスーパーマンの故郷である惑星クリプトンのクリスタルを使って新大陸を作り、自分自身が制覇することである。

「新大陸を作る」という目的自体スケールでか過ぎだが、さらにレックスはクリスタルを「クリプトナイト」で覆い増幅させている。「クリプトナイト」はスーパーマンの能力を封じ込める放射性物質を含んだ鉱物なのだ。

クリプトナイトを含んだ新大陸の地面に触れただけでグッタリとしてしまうスーパーマン。サンドバッグのようにパンチとキックをレックス一味にあびせられ、さらにクリプトナイトで作られたナイフで脇腹を刺され海へと投げ出される。

ここまで嫌というほど「最強」な前振りを見せられているだけに、この場面はかなりショッキングだ。
まさに瀕死のスーパーマン。もう映画も終盤だがはたしてここからどのように敵を倒すのだろう?ここから逆転などできるのか?と心配して観ていたが、フィナーレに向けての導線がなんとも短絡的でいただけなかった。

海に漂っていたスーパーマンは実の息子であるジェイソンにあっという間に発見される。そしてロイスらに救出されすぐに復活。再び新大陸に舞い戻りなんと新大陸を「素手」で持ち上げ、そのまま宇宙まで運んで宇宙空間に投棄するのである。

これはもう、もはや映画でなくて漫画である。いやもちろん漫画を原作にしているので漫画には違いないのだが、他のヒーロー物に比べて物語としてのリアリティがなさすぎる。完璧なファンタジーだ。思い入れのしようがない。触れるだけで力を奪われるはずの「大陸」を持ち上げて、それを宇宙まで運んで捨てられるんだったら弱点などあってなきがごとしじゃないですか。

あまりにも強いスーパーマンがあまりにも強いまま描かれたこの映画。映像は厚みがあり本当に素晴らしかったが、なんとも心に残るもののないマンガチックな映画であった。(67点)

 

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