ネタバレありの映画批評 ムービー・インプレッションズ

マトリックス

1999年 アメリカ 136分

監督:ウォシャウスキー兄弟
出演:キアヌ・リーブス、ローレンス・フィッシュバーン、キャリー=アン・モス

 

今の世界は現実なのか? 20世紀最後の傑作

映画は誕生してから100年たらずしか経っていない、歴史の浅い芸術だ。

モノクロからカラー、無声からトーキー、さらに合成や逆回しなどのフイルム処理により表現の幅が増え、現在はCGを駆使した映像によって表現は無限の領域へと踏み込んだと言えよう。

しかし技術的な可能性がいくら膨張したところで基本2時間という限られた尺、観賞者に感動を覚えさせる物語の構築となると、脚本や演出、カメラワークなどの基本的な手法に立ち戻ることとなる。

’99年の世紀末に公開された「マトリックス」は、当初こそ見たことのないような映像表現が大きく取りざたされた。キアヌ・リーブスが身を反らして銃弾をかわすシーンなどは、本編を知らずとも見覚えのある人が多かろう。

もちろんそれら完成度の高いアクションシーンは公開から10年以上経った今でも色褪せないのだが、この映画の素晴らしさは映像だけではない。

物語はまず「映画上の現実社会は実は仮想現実である」という最大の舞台装置を観賞者に突き付ける。

「今現在が本当に現実なのだろうか?」と不安に思ったことはないだろうか。我々は今が夢の状態にいるのかそれとも現実の状態にいるのか証明する術を科学的に持たない。

「マトリックス」はそんな現実の生活を営んでいる「はず」の我々の存在感を強く揺さぶる。更に次々に繰り広げられるCGを駆使した映像が、「仮想現実の中では何でもありなんだ」と映画的な説得力を強化する。

ヒロインの名前トリニティー(三位一体)など、そこかしこにキリスト教世界の終末論を連想させるが、哲学や宗教の素養がなくとも十分楽しめる、現実を生きるはずの我々を引き付ける第一級の娯楽作である。(92点)

 

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