ネタバレありの映画批評 ムービー・インプレッションズ

マルコヴィッチの穴

1999年 アメリカ 112分

監督:スパイク・ジョーンズ
脚本:チャーリー・カウフマン
撮影:ランス・アコード
出演:ジョン・キューザック、キャメロン・ディアス

 

謎を投げっぱなしで進んでいくストーリー

「マルコヴィッチの穴」とは、マルコヴィッチという人間の中に入ることができる入り口のこと。この穴を潜ることで俳優・マルコヴィッチの人生を15分だけ体験することができる。

ひょんなことからこの穴を発見した主人公クレイグは、この入り口を使うことで気になる美女のマキシンとともにビジネスを展開。マキシンの気をひくため、最終的にはマルコヴィッチの中に入り続けマルコヴィッチを支配することになる。

以上のような荒唐無稽なストーリーが受けて中ヒットを飛ばし、脚本を手がけたチャーリー・カウフマンはアカデミー脚本賞を受賞するにいたった。

好きな人もたくさんいるであろうこの作品、正直私はあまりおもしろいとは思わなかった。上映時間112分は近年伸び続けている上映時間に比べれば短い部類に入るかもしれないが、退屈でかなり長く感じることになった。

始まりの30分はとても素敵だ。主人公の人形使いという設定。主人公と妻の愛情の温度差。人形使いとしての仕事がないため、新聞広告から新しい仕事を見つける。面接場所はとあるビルの「7と1/2階」。戸惑う主人公を尻目に、ビルの住民は7階と8階の間で緊急停止ボタンを押し、こともなげにバールでエレベーターをこじあける。エレベーターのドアには、バールでこじ開けたであろう跡がいくつもついている。「7と1/2階」ではみんな少し屈んで歩くことになる。急場こしらえで作られた階なので、天井が低いのだ。こういったことがいちいちおもしろい。

ここまでは本当に完璧だった。まるで村上春樹の初期の短編を読んでいるようだった。この先どうなるんだろう?とかなりワクワクしながら観た。

しかし、主人公の妻ロッテが「マルコヴィッチの穴」を体験したところあたりからつまらなくなる。奇抜な設定に依存して、ただ思いつくままに物語を進めていっている印象を受ける。物語に「厚み」がないのだ。

なぜ、「7と1/2階」などという中途半端な階が作られたのだろう?物語の序盤でごく簡単にそのワケが語られるが、それは対外的な理由で実は本当の理由があるのだろう。と思って観ていたが何もなかった。

「マルコヴィッチの穴」は明らかに人為的に作られた入り口だった。それをたまたま主人公が見つけたのだ。では一体、誰が何のために作ったのだろう。これはきっと「7と1/2階」に関係があるのだろう。と思って観ていたが、何も理由は語られなかった。

「マルコヴィッチの穴」に入ると15分後に高速道路の脇の空き地に放り出される。その辺りの空間とマルコヴィッチは繋がっているのだ。なぜその場所が出口なのだろう?マルコヴィッチと関係があるのだろうか?と思って観ていたがその理由は語られなかった。

全部投げっぱなしである。思いつくまま構成など練らずにただただ積み重ねっていっただけのストーリーに思える。

投げっぱなしのナンセンスな物語もあっていい、もちろん。ただ私には退屈で上映時間が長く感じたというだけの話である。(57点)

 

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