ネタバレありの映画批評 ムービー・インプレッションズ

死霊のえじき

1985年 アメリカ 102分

監督:ジョージ・A・ロメロ
脚本:ジョージ・A・ロメロ

撮影:マイケル・ゴーニック

出演:ロリ・カーディル、リチャード・リバティー、ジョン・アンプラス、テリー・アレクサンダー、ジョセフ・ピラト−

 

絶望と希望、抑圧と解放。両極端で観客を釘付けに

とてもおもしろい映画だ。低予算で作られたゆえ色々と詰めの甘い部分は見られるが、しっかりと構築されている脚本とメリハリのある残虐シーン、ラストに迎えるカタルシスがそれを補って余りある。

この作品はロメロ監督のゾンビ三部作の三作目となっている。前作「ゾンビ」の続きの世界として物語は始まるので、特に前置きなくすでに街(というか世界)にはいたるところにゾンビが存在している。この映画を見る人で、「ゾンビって何?」という予備知識のまったくない人はいないと思うが、一つ前の作品を見てからのほうがより楽しめるのは間違いないところ。

あてにしていた資金提供を得られず予算規模が縮小して制作された本作は、なるほどそのシーンのほとんどは生き残った十数名が暮らす地下基地でのものとなる。アーミーと科学者、エンジニアという素晴らしく偏った人選の生き残りは、それぞれの職業的な思想で相入れない部分があるのは当然。アーミーは自分たちの都合のいい規律を押し付け、科学者はゾンビを解体し実る見込みの無い研究に明け暮れ、エンジニアたちは現状を解決するのを諦め、ここ以外のどこかにある楽園に思いを馳せて暮らしている。

もちろんこの三つ巴の秩序を乱すのはアーミーである。暴力で統制をとろうと研究者やエンジニアに銃を突きつけて高圧的な態度をとる。それに反発する研究者、いなすエンジニア。そんな関係図の説明的なシーンが序盤から中盤にかけて続くのだが、この辺は正直いってだるい。すべてが地下のロケーションの上、いつまでも怒鳴り合って諍いを起こしているので、見ている方はだんだんと陰鬱な気持ちにもなってくる。

しかしこの映画は終盤、とんでもないシーンを連続して挿入する。

ゾンビが絶対に入って来られないと安心しきっている安全な地下で、しょうもない言い争いをし合う人間たち。そこに、現状に絶望した人間がゲートを開け、何百、何千という大量のゾンビが一気になだれ込んでくるのだ。逃げ惑う人間。銃弾で何体かのゾンビを粉砕するが、四方八方から群がるゾンビを前に気が狂い、ついには捕えられていく。意識のあるまま、手足をちぎられ、目を繰り抜かれ、臓器や肉、皮、その全てをゾンビによって貪り食われるのである。全編にこのような残虐なシーンが続けば気分が悪くなるだけだが、前半から中盤にかけての抑圧されたシーンから一転、一気にゾンビ映画に相応しいシーンの連続。見ている方は完全に映像に釘付けになる。

そして最後には逃げおおせた人間が無人島と思われる島でエピローグを迎える。

ラストの11月のカレンダーを作成するシーンも秀悦だ。オープニングは10月のカレンダーに手を触れた途端、壁からゾンビの手が湧き出るという夢のシーンから始まっていた。10月は安全なはずの地下に大量のゾンビが一気に侵入する。そのことを夢は暗示していたのである。(85点)

 

Pocket