ネタバレありの映画批評 ムービー・インプレッションズ

私は猫ストーカー

2009年 日本 103分

監督:鈴木卓爾
出演:星野真里、江口のりこ、宮崎 将、品川 徹

 

一匹の猫の不在が、世界を暗くする

猫好きな人間がこのタイトルを見て、反応しない人などいるのだろうか(いやいまい)。かくいう猫に目がない筆者も十分に反応した。

猫好きなイラストレーターの主人公が近所のノラ猫をストーキング。潜伏図を作成しながら夜中にひっそりとほくそ笑む姿、その心情はなかなかに共感できるものがある。

おそらく猫をただただ追っかけ回して終わる映画であれば個人的におもしろいと感じたかもしれない。しかしホームビデオならいざしらず、(監督本人がそうしたいと思ったとしても)それだけで2時間弱の尺のすべてを埋めるのは勇気のいることだろう。

色褪せたフイルムのような味わいのある画作りで、基本平坦なプロットでストーリーが進む中、主人公がアルバイトをしている古本屋のご夫婦に色恋沙汰らしいいざこざが発生。それとタイミングを同じくして店で飼っている家猫が急にどこかにいなくなってしまう。事件である。

絶叫してなじる奥さんに無言のご亭主。平和なはずの日常はあっという間に悲しい世界へと落下する。

ご亭主と2人、猫を探しに行く主人公の姿は嬉々として猫をストーキングしていた序盤の姿とは打って変わり、味わいのあった色褪せた映像は物悲しさを助長する。カメラの前を通り過ぎるノラもまたみすぼらしく感じてしまう。

「死際に姿を消す」という通説があるように、猫の消失は不吉な予感を観客に連想させる。結局別カットで猫が他のノラたちと駆け回る姿が映し出され、単に自由になりたかっただけなんかい、とゆるい落ちがつくのだが…。

争いが絶えないとまではいわないまでもそれぞれが主張を押し付けあって生きている現実世界。猫をモチーフにした映画ぐらいは平和なまま、何も起こらない平坦なストーリーのまま終わって欲しかったと思うのは、もちろん猫好きな一観客である私のわがままであろう。(45点)

 

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