ネタバレありの映画批評 ムービー・インプレッションズ

GOEMON

2009年 日本 128分

監督:紀里谷和明
出演:江口洋介、大沢たかお、広末涼子、ゴリ、中村橋之助、奥田瑛二

 

気合や情熱が空回り。映画の基本を置き去りに

ある人物の人柄に迫るテレビ番組「情熱大陸」。民放らしからぬ腰の入った取材にディープなファンもたくさんいることだろう。’09年5月17日放送に登場したのは映画監督の紀里谷和明だった。

カメラは最新作『GOEMON』の制作風景からクランクアップを足早に追いかけていく。画面からは、はみ出さんばかりに映画への情熱と執念を放つ紀里谷監督の姿。「これほどまでに気合の入った映画なら、劇場へ足を運んでみよう」と観賞してみたのだったが…。

「気合や情熱だけでは、おもしろい映画を作ることはできない」というのが観終わった後の感想だ。

最初の5分は度胆を抜かれる。全シーンにおいてCGを駆使し、まさに観たことのない映像世界が繰り広げられる。

こんなもの映画じゃないという人がいるなら、では映画とはなんぞや? と問いたい。映写機が発明されスクリーンに映像が映し出された瞬間、映画の歴史は始まったのだ。映像が映りそこに物語がある限りは、どんなものでも映画だ。

既成概念の打破こそが、この監督の最も挑戦したいことの一つであろう。しかし、物語は中盤から破綻する。

人間が描けていないだけならまだしも、「心優しき観客の想像力」を過度に期待したのか辻褄を合わせる努力さえ見せていない。

登場人物のセリフは、陶酔したアフォリズム(警句)に終始。力の入った決め台詞が全編に行き渡れば、もはや決め台詞としての機能を果たさない。

終盤のゴリの登場はしてやったりのつもりだろうが、ストーリーが破綻しているにもかかわらず先が読めてしまった。褒美をくれと叫ぶゴリの姿は印象的だが、立身出世を厭世的に描くことが主題だったとしたならまったく伝えきれていない。恋愛と友情の物語だと思いながら観ていたので最後のゴリの姿はまさにとってつけたよう。破綻を助長している。(25点)

 

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