ネタバレありの映画批評 ムービー・インプレッションズ

LOOPER/ルーパー

2012年 アメリカ 119分

監督:ライアン・ジョンソン
脚本:ライアン・ジョンソン
撮影:スティーヴ・イェドリン
出演:ジョゼフ・ゴードン=レヴィット、ブルース・ウィリス、エミリー・ブラント

 

未来のために、自分へ銃口を向ける

かなり満足度の高い映画だった。こういう映画に出会うと、本当に映画はすばらしいものだとしみじみ思う。

物語の舞台は2044年。それからさらに30年後の2074年では、すべての人間にナノマシンが注入されているため、殺人を犯せばすぐに足がついてしまう。そのためタイムスリップを用いて殺したい相手を30年前に送り込み殺害を依頼、焼却して証拠隠滅まで請け負うのがルーパーという設定。

送られてくる人間をまるで流れ作業のように淡々と銃殺するルーパーだが、ときには30年後の自分が送られてくることがある。もちろん誰であろうと指示された人間を殺さなくては、今度は組織に自分が殺されてしまう。否が応でも未来の自分を現在の自分自身が殺さなくてはならない。これがこの映画の肝。

淡々と任務を遂行していた主人公ジョーの人生が急展開するのも、未来から自分自身が送られてきたときから。猫っぽい顔立ちのジョゼフ・ゴードン=レヴィットの未来の姿であるオールド・ジョーが面長のブルース・ウィリスという設定は、かなり無理があると思わざるを得ないが、そんな邪念が入るのもほんの束の間のことだ。すぐにドライブのかかるストーリーに入り込むことになる。

この映画は伏線がいくつも散りばめられ、その一つ一つがふとしたところで回収されていく。思い出すだけでもこれだけあった。

コインを浮かせる超能力TK → レインメーカーのボス(シド)の母親がTKの持ち主。さらにシドも強力なサイコキネシスの能力を持つ

フランス語を学んでいるジョーにルーパーのボスが「フランス語より中国語を覚えた方がいい」と言う → ジョーが逃げた先は上海

オールド・ジョーがルーパーの殺害場所に遅れて転送される → 転送前にオールド・ジョーが自分を捕らえた組織を打ちのめしていた。そのタイムラグ

レインメーカーのボスは人口顎を持つ → シドはオールド・ジョーに顎を撃たれる

至近距離しか撃てないラッパ銃 → ジョーは遠くにいるオールド・ジョー殺害を諦め自分に銃口を向ける

「お前は自分のことしか考えない」とオールド・ジョーがジョーをたしなめる → 悲劇を作らないためジョーは自決を選ぶ

ジョーが子供の頃、母親が優しく髪をとかしてくれた → ジョーが死んだ後、サラはジョーの髪を優しくとかした

タイムスリップとタイムパラドックスを扱う映画は、とかくストーリーが混乱しがちだ。かといってそれらを丁寧に説明していては物語の勢いが削がれる。
散りばめた伏線とその回収は、交錯する過去、現在、未来の関係性をわかりやすくするため、そしてシーンを印象深くするために十分に機能している。

麻薬に溺れて孤独に日々を消耗して生きていたジョーが、オールド・ジョーに出会い、サラに出会い、シドと出会うことで少しずつ他者へと目を向けていく過程も無理がなく説得力がある。

一つ気にかかるのはシドがサイコキネシスを持つという設定。この能力を描くなら「レインメーカーのボスはサイコキネシスを持つ、そしてその能力を使って未来をこういう世界に変えている」といった状況説明が必要だったのでないか。勢いよく進んでいくストーリーにこの設定自体が浮いた、余分なものに思えた。その点はマイナス。(88点)

 

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