ネタバレありの映画批評 ムービー・インプレッションズ

スリー・キングス

1999年 アメリカ 114分

監督:デヴィッド・O・ラッセル
脚本:デヴィッド・O・ラッセル
撮影:ニュートン・トーマス・サイジェル
出演:ジョージ・クルーニー、マーク・ウォルバーグ

 

自国が起こした戦争を内省的に表現

1991年に起こった湾岸戦争を題材にした物語。湾岸戦争とは隣国クウェートに侵攻し武力制圧したイラクに対して、アメリカ・イギリス・フランス・周辺の中東諸国などで結成された多国籍軍が仕掛けた攻撃を指す。

多国籍軍といっても湾岸戦争がアメリカ主導で行われたのは明白なこと。アメリカのイラク攻撃はクウェート侵攻に対する「正義」が大義名分だが、もちろんペルシャ湾沿岸のオイルをイラクに掌握させないといった様々な利権が絡んでいるのもまた明白。

歴史的に決着がついている太古の戦争はいざしらず、ここ数十年に起こった戦争を題材に作られた映画であればそこには自然と反戦のメッセージが入るだろう。この「スリー・キングス」も明確な表現こそないが、戦争への皮肉めいた非難が随所に見られる。この映画を観ている間中、「戦争という見ず知らずの人間同士が傷つけ合う行為は、本当に愚かでばかばかしいことだ」といった思いを抱いた。
極東の一地方都市に住む人間にそういった意識を抱かせることだけでも、この映画は制作された価値がある。

物語前半のプロットは、4人のアメリカ兵がイラク軍の隠したクウェートの金塊を探すことに費やされる。クウェートを救いに来た「正義の軍団」であるはずのアメリカ兵が、クウェートの金塊を探すのやっきになる、これはまさにオイルに群がるアメリカの縮図だ。
真っ青な中東の青空と停戦協定に入っているとはいえ敵地に乗り込んでいる4人の緊張感、それらがコントラストのある空気をつくり印象的なシーンをいくつも作る。

後半から終盤は少し脚本が迷っている印象を受けた。
例えば捕らえられたアメリカ兵と拷問をかけるイラク人はお互いに自分の家族のことを語り合う。生後一ヶ月の赤ん坊を亡くしたとイラク人が叫び、自分の子供が同じ目に合ったらとても耐えられないとアメリカ兵が嘆く。

こういった登場人物たちの背景は、語られるまでもなく観客が下地として持っていることだろう。あらためて言葉にして登場人物に語られると、物語に入り込んだ意識が覚めてしまう。
終盤の、邪魔をするアメリカ軍の兵士に金塊を渡し反フセイン軍をイラン国境へ導くくだりも少し白々しく感じた。

それでも自国の起こした戦争を内省的な物語に落としこんだこの映画は、それだけで一定の評価を得るに値するだろう。(67点)

 

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