ネタバレありの映画批評 ムービー・インプレッションズ

ミスト

2007年 アメリカ 125分

監督:フランク・ダラボン
出演:トーマス・ジェーン、マーシャ・ゲイ・ハーデン、ローリー・ホールデン

 

首を捻らざるを得ない、不可解なラストシーン

観終わった後、「これはないな…」と思った。もちろんラストシーンについてだ。

突如霧に包まれたアメリカのとある田舎町。スーパーマーケットに買い物に来ていた主人公親子をはじめ数十人の買い物客たちは、霧の中に異型で攻撃的な生物の存在を感じ外に出ることができなくなる。

シャンプーをして両目が塞がっている時に訳もなく恐怖を感じた経験はないだろうか?外的情報の大部分を視覚に頼っている人間は、視界不良になった途端に恐怖を感じだすものだ。
視界不良を作り出す「霧」というごくありふれた自然現象を舞台装置に、ホラーを作り出すのは単純とはいえ良いアイデアだ。

スーパーマーケットという狭い空間に何十人もが閉じ込められる、しかも霧の中に得体のしれない生物がいる。そのような状況であれば人間はパニックになって当然だ。

中盤にかけてまで聖書片手に終末論を振りかざす女の存在がことさらに強調される。観ていてかなり鬱陶しく感じるキャラクターが、終盤には主人公たちを追い詰めていくまでに成長していく。

結果的に主人公のグループ8人以外はすべて宗教女に同調する。異常な宗教女に簡単に同調するか?といった疑問がなくはないが、極端な状況の変化が描かれるからこそ、「このような状況では何が起こってもおかしくはない」と逆に緊迫感が強化されていく。

おそらく映画に見慣れた人であれば、「ミスト」を観ながら二通りのストーリーを想像したのではあるまいか。二通りとはすなわち、団結して戦い勝利するか、団結して脱出し逃げ切るか、だ。

この映画は観客に対して2つの裏切りをかまして非常に観ているものを居心地悪くさせるのだが、まずは団結するという流れを裏切る。

スーパーマーケットの内部は宗教女につく大部分と主人公側の8人に分断。さらに脱出する主人公たちは車に辿り着くまでの間に男性3人が脱落し、残るは老人が2人、子どもが1人、女性が1人、そして主人公となる。
このメンバー構成から次々と現れる怪物を倒すというストーリーは状況から有り得なく、脱出して逃げおおせることを期待しながら観ることになる、しかし…。

ガソリンが切れて立ち往生すると、みな銃で自殺することをよしとする。都合よく4発しか残らなかった弾丸。「僕を怪物に殺させないで」と頼んでいた主人公の子どものセリフが伏線となり、主人公は自分の子どもを含め自分以外の4人に引き金を引く。
絶望して車から出た主人公。霧に向かって「さあかかってこい!」と涙ながらに訴えた直後に霧は晴れ、クリーチャーを焼き払いながら住民を救出するアーミーの姿が見える。
そんな絶望と希望がごちゃまぜになったなんとも言えないラストシーンで映画は終わる。もう一つの裏切りとは、「勝利することも逃げ切ることもできなかった」ラストシーンの裏切りである。

私はこのラストシーンを観た時に首を捻らざるを得なかった。クリーチャーが出現して人々が逃げ惑うパニックホラーに、このようなラストシーンが果たして必要なのだろうか?と。観客を嫌な気持ちにさせる以上のどんな効果があるのだろうか?

シリアスな映画はその必要性があるからシリアスな形式をとるのであり、アクション映画はその必要性があるからアクションの形式をとるのである。鑑賞する人間の心を別の場所へと連れて行く破壊力のある物語を作るには、内容と形式を一致させる必要がある。

ラストシーンをこのようにしたいのであれば、クリーチャーなど出現させないほうがいい。霧など発生させないほうがいい。ホラーやパニックの形式をとるべきではない。
人間同士が疑心暗鬼になり、追い詰められ、最後に死を選ばざるを得ない状況となるなら、ドラマを中心にした形式にすべきだ。

私はこの映画を観終わった後、一つ一つの積み木を積み上げて最後に大笑いしながら叩き潰す赤ん坊の映像が思い浮かんだ。インパクトがあり驚くが、後味の悪さしか心に残らないのだ。(25点)

 

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