ネタバレありの映画批評 ムービー・インプレッションズ

ドラゴン・タトゥーの女

2011年 アメリカ 158分

監督:デヴィッド・フィンチャー
出演:ダニエル・クレイグ、ルーニー・マーラ

 

圧倒的な存在感の「ドラゴン・タトゥー」を背負った女

かなりおもしろい映画。158分という長めの上映時間ながら、ラストシーンまであっという間だった。劇場で観た後、DVD版を2回観てしまった。

謎解きがメインのミステリーであるが、この作品の面白さは謎解きにはないと思う。

没落した名家であるヴァンゲル家に40年前に起きた16歳の少女・ハリエットの失踪事件。ヴァンゲル家当主のヘンリックが「自伝の執筆」としてその調査を経済記者のミカエルに依頼することからストーリーは動き出すのだが。

忽然と姿を消した失踪事件であるにもかかわらず、ヘンリックが「ハリエットは殺された」と断言するところで、まあ普通に「あ、ホントは生きてるのね」と思ってしまう。
ストーリーはそのままハリエットが死んだ前提で調査を続けるうち、結局生きていたという規定路線ともいうべき結末がつく。

ここだけを切り取れば先の読めるミステリー、つまらない映画の代名詞のようだが、それでも面白い映画だと思えるのはミカエルのアシスタントとして調査を行うことになるリスベットの圧倒的な存在感にある。
そう、これはミステリーではない。「ドラゴン・タトゥー」を背に背負った女の物語なのだ。

ミカエルとリスベットが合流して調査を始めるのは物語の中盤から。それまでは互いの物語が同時進行で行われるのだが、ミカエルとリスベットが出会うまでに積み上げるリスベットという女の性質の描き方が実にうまい。

保護観察中の身でパソコン一台買うにも保護観察員の許可が必要のリスベット。まあこの保護観察員というのがかなりゲスい人間なのだが、リスベットは暴力と脅迫でこの不自由な状況を打破する。その暴力と脅迫が保護観察員のかなり斜め上をいくえげつなさ。
しかしその目を背けたくなるようなシーンにもかかわらず、スカッとした心持ちを観客はどこかに持つだろう。保護観察員のゲスさが前振りにあるため、リスベットの仕返しはそれがどんなひどいものであろうと観ている者にとっては正当化される。ドラゴン・タトゥーの女は暴力的で、精神異常者で、残忍で、クレバーで、そして観客にとってはすでにヒーローとなっている。

このリスベットが事件解決のためにミカエルと合流するとなれば、観ている我々のテンションはどんどん上がっていくというものだ。

ラストシーンのほろ苦さは賛否両論あるだろう。私はミカエルにプレゼントを用意するというのが、「普通の女の子のようになった」といった凡百のプロットを感じさせて、少し説教臭さ感じた。(86点)

 

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