ネタバレありの映画批評 ムービー・インプレッションズ

ワールド・ウォーZ

2013年 アメリカ 116分

監督:マーク・フォースター
脚本:マシュー・マイケル・カーナハン、ドリュー・ゴダード、デイモン・リンデロフ
撮影:ロバート・リチャードソン
出演:ブラッド・ピット、ミレイユ・イーノス、ダニエラ・ケルテス、ジェームズ・バッジ・デール、ファナ・モコエナ

 

ゾンビ映画としてはあまりにも物足りない

評価の難しい映画だ。ハリウッドお得意の巨額な制作費を投じたパニックアクションとすればそれなりの評価に落ち着くのだろうが、パニックの原因を世界中にファンを持つゾンビにおいているところから評価を二分させている。

パニック映画としてみれば、ストーリーはお手本通りの流れを作っている。
まずはいつもの日常が描かれ、異変が起こり、最初は逃げるが、結局立ち向かう道を選び、困難の末に解決し(もしくは解決の糸口を見つけ)、希望に満ちた言葉で締めくくる。ハリウッド産パニック映画はほぼ例外なくこの型にあてはまる。

これまでのゾンビはホラーのカテゴリーに入ると思う。しかしワールド・ウォーZは間違いなく(パニック)アクション映画だ。従来のゾンビファンにとって一番違和感のある点は、この部分ではないだろうか。この作品に、ゾンビ映画の定番である思わず目を背けたくなる残虐なシーン、少しずつゾンビに囲まれていくなんともいえない圧迫感の恐怖シーンはない。ホラーではなくアクションという形式をとっているのだから、ゾンビという物体そのものの特徴や映画上の立ち位置が従来とは変わってくる。

これまでホラーとして描かれてきたゾンビという物体には定義があるように思う。
それは以下の様なものではないか。

・死者の生き返りである
・動きはのろく、両手を進行方向へ水平に上げている
・人肉を求め生きた人間に群がる
・少しでもかじられた人間は感染し、ゾンビとなる
・倒すには頭部を破壊するしかない

なぜゾンビという存在が怖いかというと、

動きはのろいのだが集団で襲われ少しでも齧られれば感染してしまう→
齧られれば人間として生きることを諦めるしかない→
齧られてしまった人間はなされるがままで死を選ぶか、自ら死を選ぶ→
ゾンビとなる

といった部分にあるのではないか。

銃で一発で撃たれたり、ビルから落ちたりといった、一瞬で終わる死の恐怖ではなく、
「少しずつ人間であることを諦めていく」過程が必然として起こる。
恐怖し、錯乱し、諦めていく。ゾンビに襲われた人間が見せるそういった表情の推移が
観ている観客に恐怖心を植え付けるのだ。

しかし「ワールド・ウォーZ」に登場するゾンビは、これまでのゾンビ映画と比べて大きな二つの相違点がある。
それは、「動きが素早い」ことと「物音に敏感」なことである。じりじりと追い詰められていくような恐怖ではなく、戦争映画で敵兵と肉弾戦を行うようなわかりやすい恐怖だ。

「ワールド・ウォーZ」をみていて私は、シューティングゲームを見ているようだ、と思った。
物音に敏感なゾンビに気づかれないように移動し、いざ気づかれれば全速力で追いかけてくる
ゾンビたちを銃火器を駆使して迎撃する。

ハラハラ・ドキドキ系のシーンはたくさんあるのだ。
イスラエルを舞台に大群となったゾンビたちが壁を登り追いかけてくるシーンは、スピード感あふれる映像で見事の一言。このシーンだけでも見る価値はあるのかもしれない。

しかし、と思う。
脚本もそれなりに練られているし映像にも巨額の制作費が投じられている。でも見終わっても爽快感はあるが、恐怖心は何も残っていないのだ。目をつむってもゾンビの顔を思い出して怖くなることなどない。であるなら、やはりゾンビを題材にしなくてもよかったのではないかと思う。パニックアクション映画としてはそれなりのものかもしれないが、ゾンビを題材にしている以上、私はゾンビ映画としてみる。
そしてゾンビ映画としてみてみれば、この映画はあまりにも物足りないなと思う。(65点)

 

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