ネタバレありの映画批評 ムービー・インプレッションズ

ロスト・メモリー

2012年 ドイツ 102分

監督:アレックス・シュミット
脚本:アレックス・シュミット
撮影:ウェディゴ・フォン・シュルツェンドーフ
出演:ミナ・タンデル、ラウラ・デ・ベーア、カタリナ・タルバッハ、マックス・リーメルト、クレーメンス・シック

 

思わず「やられた!」と声上げること必至

サスペンス映画を観た時、作品の良し悪しを決める判断基準はなんだろう? 観る人それぞれに基準が存在するかもしれないが、私の基準は「いかに観ている側が騙されるか」にある。

ハンナとクラリッサの幼なじみ二人は、子供の頃のバカンスを小さな島で過ごしていた。序盤に映し出されるその頃の映像はひどく断片的で、二人は何かしらの秘密を持ったことだけが分かる程度。観客はわずかな情報を得たままストーリーを追うことを余儀なくされる。

それから25年の時が過ぎ、ひょんなことから再会したハンナとクラリッサは、クラリッサの提案で小さな島に再びバカンスへと出かけることになる。

そこで徐々にハンナの記憶が蘇ってくる。小さな島で仲良くしていた島の娘・マリアの存在。ハンナのことを信頼していたマリアをいじめるようになり、クラリッサとともに洞窟の深い穴へ落としてしまったことを少しずつ思い出していく。

さらにはマリアの弟が海岸に死体として打ち上がる。弟を抱きかかえるマリアの母親と目が合うハンナ。マリアの復讐を暗示させる鋭い視線にハンナは怯え、その場から立ち去っていく。小屋に戻り荷物をまとめ、朝に島を出ようとするがあいにく海がしけて船の出港が中止されている。

ここまでを観て、本当に私は「退屈な映画を選んでしまった」と後悔していた。出られなくなった島というのはサスペンスの王道ともいえる舞台装置だ。ここで登場人物たちは何者かからの殺意に怯え、島から出られない恐怖に怯える。退屈だ。あまりにも凡庸だ。金返せ。

そこにスクリーン上には小さな女の子が登場する。幼いマリアのようなその姿は、ハンナの娘をどこかに連れ去ってしまう。このシーンを観た時に、私の心は動揺した。幽霊だろうか? オカルトオチ? いや、こんなリアリティある映像でそんな流れはありえない!

先にネタバレをすると、小さな女の子はアンナの子どもだった。クラリッサがアンナの子どもに「もっとしっかり役を演じろ」と叱責する。つまり、今回ハンナを島へと連れ出した幼なじみのクラリッサが実は成長したアンナその人だったのである。

このネタばらしをされたときに、「やられた!」と心の声をあげた人が多数いるのではないだろうか。私は上げた。

落とし穴に落とされ急死に一生を得たアンナはハンナとクラリッサに復讐を誓いながら成長し、クラリッサはさっさと殺害。主犯格のハンナには島に引き連れて自分がしたことを後悔させた上で殺害しようと周到に計画を練っていたのだ。

この映画の優れたところは、アンナの存在そしてアンナに行った罪を少しずつスクリーン上へ出していったところにある。最初の回送シーンからアンナが登場し、アンナが穴へ落ちたシーンが映し出されていれば勘のいい人であれば「クラリッサ=アンナでは?」と感づいたかもしれない。

アンナの浸透のさせ方がこの映画の肝だ。しかしこれを仕掛けるのは結構勇気がいることだろう。なぜなら「クラリッサ=アンナ」がわかるまで、この映画は非常に退屈な印象を持たれるからだ。

ひょっとしたら退屈のあまり途中で見るのをやめてしまった人もいるかもしれない。そんな人は本当にもったいないことをしたと思うし、これがどんでん返しの仕掛けを施したゆえのリスクでもある。(84点)

 

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