ネタバレありの映画批評 ムービー・インプレッションズ

ファンシイ ダンス

1989年 日本 101分

監督:周防正行
出演:本木雅弘、鈴木保奈美、竹中直人、田口浩正

 

棒読みセリフに摩擦のないストーリー

シコふんじゃった。』から遡ること3年前。同じ監督、同じ主演、脇役もほぼ同じという布陣で、『ファンシイ ダンス』が公開された。

シコふんじゃった。』に感銘を受けた私は、周防監督のルーツを探るべくこの映画を観ることにした。しかしそこで私は、大きな失望を味わうことになった。

秀逸なプロットで魅了してくれた『シコふんじゃった。』とは違い、『ファンシイ ダンス』は軸らしい軸のないちぐはぐな雰囲気の作品だった。それが魅力なのだろうが、娯楽作品を期待していた私は肩透かしをくらい、さらに監督の演出や脚本に疑問を持ったのである。

例えば、登場人物のほとんどは、抑揚をつけずに棒読みのようにセリフを話す。それは演出なのだろうが、どのような狙いがあるのかよくわからない。リアリティをなくすため? なぜそのような演出を行なうのか、その効果が見えない。

また「若者が禅寺に修行に行く」。こういったことをテーマに置くなら、

「俗世間にまみれた若者が戒律の厳しい寺に修行に行く」
もしくは、
「堕落した寺に自己管理のしっかりできた若者が修行に行く」

などの設定であれば摩擦が生じ、物語は立ち上がりやすい。

しかしロックバンドのヴォーカルである主人公は、堕落しているのかと思いきや、自己管理ができている。禅寺は戒律・規則が厳しいのだが、先輩僧侶は普通にナマグサ。主人公とは交わるでもなく摩擦もなく平行線のままだ。ドラマはない。

主人公には彼女がいる。彼女は当然会いたくて駄々をこねるのだが、かといって浮気するでもなく、寂しがるでもなくクールだ。大きな摩擦なく物語は終わる…。

もちろんすべての映画に芯の通ったプロットが必要だというわけでは決してない。しかし『シコふんじゃった。』を何回も繰り返し観た私にとって、この不完全燃焼の映画は腑に落ちない作品であった。(38点)

 

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