ネタバレありの映画批評 ムービー・インプレッションズ

パシフィック・リム

2013年 アメリカ 132分

監督:ギレルモ・デル・トロ
脚本:トラヴィス・ビーチャム、ギレルモ・デル・トロ
撮影:ギレルモ・ナヴァロ
出演:チャーリー・ハナム、菊地凛子、イドリス・エルバ、チャーリー・デイ、ロバート・カジンスキー、マックス・マルティーニ(英語版)、ロン・パールマン、芦田愛菜
 

ヒーロー物が好きであればドストライクのはず

2013年に突如地球に出現した“Kaiju(怪獣)”。一体倒せばまた次の一体が登場して街を破壊し、人類は次第に消耗していく。そこで各国が力を合わせて、“Kaiju(怪獣)”に対抗できる力を開発した。それが怪獣迎撃用の巨人兵器イェーガーである。
と、ここまでが前提としてオープニングにサックリと紹介される。この前提だけでひとつの映画ができあがりそうだ。本編への期待が高まってくる。

イェーガーは人間が中に乗り込み操縦する。左脳と右脳の別々の働きを使って操縦するため2人の人間が中に乗り込み、脳を一体化させるために「ドリフト」と呼ばれる記憶融合を行う。記憶融合がうまくなされれなされるほど、イェーガーは潜在能力を発揮する。つまり、イェーガーの「強さ」は2人の「相性の良さ」にかかっているのだ。

まず、このドリフトの設定がうまいと思う。単純に操縦のテクニックにより優劣が決まるのではなく、イェーガーを操る人間2人の精神性が試される。内面に入っていくためお互いが考えていること、感じることが自分のことのようにわかることにもなる。エース・パイロットだったローリーが一時引退を決意したのは、一緒に操縦しているときに“Kaiju(怪獣)”に殺された兄ヤンシーの断末魔の叫びを自分のことのように感じたからである。

そしてこの「ドリフト」による記憶の融合を深く掘り下げないのも、またアクション映画としてのバランスをうまく保っているポイントだ。ローリーは復帰後、菊地凛子扮するマコとコンビを組むことになる。「ドリフト」を行うためもちろんローリーはマコの記憶を辿ることになる。そこには“Kaiju(怪獣)”に家族を殺され悲しみにくれるマコの姿があった。
マコの現上司であるスタッカーの姿が現れて記憶の場面は終わるのだが、決してこれ以上は記憶を辿る場面を挿入しない。

他人の記憶に入っていけるのであれば、それはもうどこまでも広く深く物語を作っていけそうだ。これが日本映画ならばほんの些細な記憶を物語の最後まで引っ張りそうなものである。
しかしあくまでもハリウッド産のアクション映画として、記憶を辿るのはさらに大きなアクション場面へ誘導するための導線の一つにすぎないといった扱い。「ストーリーの枝葉はどうでもいい、それよりアクションシーンだ!CM素材に使えるすこぶる派手なやつを作れ!」そんな声が聞こえてきそうだ。その選択が非常に潔く感じる。

香港を舞台にしたイェーガーの戦闘シーンは本当にすごい。よどみのない脚本もアクション映画として複雑になりすぎていない。どの場面でも敵味方がはっきりとわかり、「何が問題でそれを解決するためにはどうすればいいのか」が提示されていてストレスがない。映像に没頭できる。とてもよくできたアクション映画だと思う。

アクションが嫌いな人は受け付けないだろうが、ヒーロー物が好きであればオープニングからエンディングの隅の隅まで十分に楽しめるはずだ。(84点)

 

Pocket



1 / 1612345...10...最後 »